おまけtxt. 「あーあ、お空、遅いなぁ」 「こんにちは、お燐さん」 「お空あいしてる!……って、お姉さんじゃないか!」 「お空ちゃんかと思った?残念、清く正しい射命丸でした♪」 「いや、残念っちゃ残念だけど」 「正直ですね……」 「しかし今日はお姉さんが配達かい?珍しいねぇ。まさかお空が風邪でもひいたとか?バカは風邪ひかないっていうけど……」 「いえ、大天狗様の使いでちょっと燐さんに話があったので、ついでに配達を」 「おうおう、女も手に入れて、上司にも信頼されるなんて、リア充街道驀進中かい?いいねぇ、羨ましいねぇ。あーあ、やっぱり頑張ってお空を連れて帰るんだったなぁ」 「何馬鹿な事言ってるんですか。私はあなたと違ってうーちゃんをそういう目では見ていませんよ。大体、一緒に暮らすということはつまり、寝起きの無防備な姿を見せつけられても我慢して朝食作らなければいけないし、お風呂上りにバスタオル忘れたーって真っ裸で出てきても黙ってタオルを差し出さなくちゃいけないし、たまに怖い夢みたーって布団の中に潜り込んできても事におよんではいけないということなんですよ。あなたに耐えられますか?」 「お姉さん、あたいは今あんたに殺意が湧いたよ」 「だから私にそういう気はないって言っているでしょうが!それに襲っちゃったから逃げられたのがお燐さんじゃないですか」 「ううっ、教えなきゃよかった……で、あたいに話ってなんだい?」 「地下に配ってる新聞の件です」 「え?購読件数伸びてるよあれ。地下の妖怪も地上のこと知りたがってるし、天狗の情報網も周知させられるのは悪い話じゃないからって許可降りたんじゃなかったっけ?」 「うん、そうだったんですけど、こちらから一方的に情報を発信してるわけですよね?情報漏洩ではないかって危惧する声が出たらしくって、ちょっと上と調整してたんですよ。まあ、今更って感じもしますがね」 「うげ、じゃあもしかして販売停止?まいったなぁ、お空に会うのを楽しみにしてたのに」 「新聞は楽しみにしてくれてないんですか……」 「そんなに落ち込まないでおくれよ。……ああ、『おくやみ』って欄あるでしょ?あれは便利だねぇ、新鮮な死体を取りに行くのにさ」 「それが狙いですかこの泥棒猫!」 「しまった!あ、ほら、さとりさまも何気に楽しみにしているんだよ。連載小説とか」 「秋色長女先生に執筆していただいているあれですか」 「えらく気に入っちゃってさ。今度自分もああいうの書きたいって言ってたよ」 「でも、あれはびぃえる……」 「ああみえてけっこうそういうの好きなんだよあの人。あたいには隠してるつもりらしいけど、どうも自分でもこっそり書いてるみたいなんだよねぇ」 「なるほど。ペットは飼い主に似るってやつですか」 「お姉さん、ちょっと一緒に灼熱地獄に来てもらおうか?」 「そそそそれでですね。新聞の件ですが、販売停止はなんとか取り下げてもらうよう粘ってたら、こちら側も地下の情報を得るべきだっていう流れになりましてね。もしかしたらこれからは積極的に地下にも取材に入るようになるかもしれません」 「すごいじゃん。でもそれだと鬼とかとも話さなきゃならなくなるよ。お姉さん、鬼は苦手なんじゃなかったっけ?大丈夫なの?」 「私は地上の取材もあるのでちょっときついと思います。だから地下の取材は……」 「まさかあたいにやれって言うんじゃないだろうね?」 「いえ、うーちゃんに任せてみようかなって思って」